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大阪地方裁判所 昭和62年(ワ)12395号 判決 1991年3月11日

原告

城泰助

被告

共栄火災海上保険相互会社

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、金八七〇万円及び内金一二〇万円については昭和六一年九月一日から、内金七五〇万円については昭和六三年一月一九日からそれぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一1  本件は、軽四輪乗用自動車が路上駐車中の普通乗用自動車に衝突して、軽四輪乗用自動車の運転者が負傷したという交通事故につき、軽四輪乗用自動車の運転者が次のとおりの損害を被つたとして、右普通乗用自動車の所有者と自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)契約を締結していた損害保険会社に対して、自賠法一六条一項に基づいて、法定の保険金額の限度で(傷害による損害につき金一二〇万円、後遺障害等級八級一号に該当する後遺障害による損害につき金七五〇万円)、損害賠償額の支払をなすべきことを請求した事案である。

2  原告が被つたと主張する損害額。

(一) 傷害による損害 金三六三万七一九六円

なお、原告主張の傷害内容は、左眼の穿孔性眼外傷、外傷性虹彩脱出、ガラス片眼内異物、顔面多発挫創、外傷性白内障、術後無水晶体症、後発性白内障であり、右傷病のため昭和六一年一〇月六日まで治療及び休業を要したとする。

(1) 治療費 金三三万〇七三〇円

(2) 休業損害 金二二四万七〇六六円

(3) 入院雑費 金五万九四〇〇円

(4) 慰藉料 金一〇〇万円

(二) 後遺障害による損害 金三三〇一万二三三九円

なお、原告主張の後遺障害の内容は、左眼の視力が回復不能となつたというものである。

(1) 慰藉料 金七五〇万円

(2) 逸失利益 金二五五一万二三三九円

二  争いのない事実

1  次のとおりの交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

(一) 日時 昭和六〇年一二月二九日午後一〇時五〇分頃

(二) 場所 大阪府枚方市都ケ丘町一八番一―一二号先道路(以下「本件道路」という。)

(三) 加害車 訴外株式会社東洋ハウジング(以下、「訴外会社」という。)が所有し、その従業員の訴外横川昌次(以下、「横川」という。)が使用し、横川が本件道路上に駐車させた普通乗用自動車(大阪五二み七〇八九、以下、「横川車」という。)

(四) 被害車 原告運転の軽四輪乗用自動車(大阪八八う二六三、以下「原告車」という。)

(五) 態様 原告者の前部が駐車中の横川車の右前部に衝突した。

2  訴外会社は、本件事故当時、横川車を自己のために運行の用に供していたものであり、横川車の駐車は自賠法三条所定の「運行」に該当する。

3  被告は、訴外会社との間で自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)契約を締結していたものであり、本件事故は右契約期間内に発生したものである。

三  争点

1  訴外会社の運行供用責任の有無。

(一) 横川車の駐車と本件事故発生との間の相当因果関係の有無。

原告は、本件道路は幅員約六・一メートルの道路で、本件事故当時、夜間で薄暗く、本件道路の両側に交互に車両が駐車していたため、原告車を運転して本件道路を進行する原告としては、右駐車車両を避けながらジグザグ運転をすることを余儀なくされていたが、これを避けきれず前方右側に駐車中の横川車に衝突したもので、横川車の駐車と本件事故発生との間には相当因果関係がある旨主張する。

これに対して、被告は、本件事故はもつぱら、相当のスピードを出したうえ、酒気を帯びて前方不注視のまま走行した原告の運転操作ミスによる自損事故というべきものであつて、横川車の駐車と本件事故発生との間には相当因果関係がないと主張する。

(二) 免責(自賠法三条ただし書)の成否。

被告は、本件道路は駐車禁止場所ではなく、また横川車の駐車態様も、本件道路を進行する車両がジグザグ運転を余儀なくされるといつた交通妨害となるようなものでもなく、その他に横川が横川車を駐車させたことには本件事故と相当因果関係のある過失はなく、前記のとおり本件事故はもつぱら、相当のスピードを出したうえ、酒気を帯びて前方不注視のまま走行した原告の過失に基づいて発生したものであり、また、横川車には構造上の欠陥及び機能上の障害もなかつたので、自賠法三条ただし書の免責に該当する旨主張する。

これに対し、原告は、車両は駐車禁止以外の道路であつても、車両を駐車しようとする者には、交差点の側端などから五メートル以内の部分に駐車してはならず(道路交通法四四条)、また、他の交通の妨害とならないようにしなければならない(同法四七条)注意義務があるにもかかわらず、横川は交差点に後尾を接するようにして横川車を駐車させ、しかも、本件事故当時横川車の前方(北側)の本件道路東側には南向きの車両が二、三台駐車していたのであるから、横川車を本件道路西側に駐車させれば同道路を進行する自動車はハンドルを左右に切つてジグザグに進行せざるを得ないなど交通の妨害になるのが明らかであるのに、あえて本件道路上西側に沿つて、南向きの二、三台の駐車車両との間に他車をジグザグに進行させる程度の間隔しかあけずに、夜間駐車灯も点灯させずに駐車したものであり、横川にはこの点において過失があると主張する。

2  損害額(後遺障害に基づく損害額及び総損害額)。

第三争点に対する判断

一  争点1(訴外会社の運行供用者責任の有無)について。

1  前記争いのない事実に加え、証拠(甲一、甲二の一、二、甲三、四、一二、検甲一ないし一二、証人横川昌次、原告本人)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認められる。

(一) 本件道路は、市街地の中をほぼ南北に直線状に走り、歩車道の区別がなく、また、センターラインによつて通行区分帯の設定されていない幅員約六・一メートル(さらにその西側には幅員約〇・三メートルの側溝が設置されていた。)のアスフアルト舗装のなされた平坦な道路であり、本件事故現場の南北には、それぞれ本件道路よりやや幅員の狭い東西道路と交差する交差点(以下、それぞれ「北側交差点」、「南側交差点」という。いずれも、信号機は設置されていないし、横断歩道も設けられていない。)があり、北側交差点の南端と南側交差点の北端との間隔は約二九メートルであつた。また、北側交差点の北側及び南側交差点の南側の本件道路も、右と同じような間隔で東西道路との交差点があつた。

(二) 本件事故当時、本件道路は乾燥していた。また、当時夜間ではあつたが、本件道路の両側は民家や商店で、南側交差点付近には街灯もあり、本件事故付近はやや明るい状態であつた。そして、本件事故当時、本件道路には何も交通規制がなされていなかつた(速度規制もなく、駐車禁止場所にも指定されていなかつた。)。このように、本件道路が駐車禁止場所にも指定されておらず、両側に民家や商店が立ち並んでいたことから、本件事故現場付近の本件道路は普段から駐車車両が多かつた。

(三) 本件事故当時、南側交差点の北端から約八メートル北側を車両先端(北端)とし、本件道路西端から約一・七メートル東側を車両右(東)端とする位置に、横川車(車幅は約一・七メートル、車長は約五メートル)が前部を北に向けて本件道路左側端に沿つて駐車していた。そして、横川車の東側で本件道路東側端付近に電柱が立つていたが、右電柱の西端と横川車右(東)端との間には約四メートルの間隔があつた。

さらに、横川車の北側で北側交差点の南側には、前部を南に向けた二台の車両(普通乗用自動車とワゴン車、以下、右二台をあわせて「南向き駐車車両」という。)が本件道路東側端に沿つて前後近接して駐車していたが、南側の車両の先端(南端)は北側交差点の南端から約一二、三メートル南側に位置していた(したがつて、南向き駐車車両の南端と横川車の北端との間には約八ないし九メートルの間隔があつた。)。

以上のように、北側交差点と南側交差点の間には横川車を含めて三台の車両が駐車していたが、これら以外には駐車車両はなく、その他に見通しを妨げたり、車両の通行を妨げたりするものはなかつた。

(四) 横川は、訴外会社の従業員で、訴外会社所有の横川車を専属に使用し、訴外会社の許可を得て、通勤にも使用していた。横川は、本件事故の約四日前に本件事故現場から歩いて二、三分の距離のところに転居してきて、当時自宅付近に駐車場を借りることができていなかつたため、通勤にも使用していた横川車を駐車禁止場所でない道路に翌朝まで路上駐車させることとし、本件事故当日の午後一〇時三〇分すぎころに、本件事故現場である前記位置に横川車を駐車させた(なお、その際サイドブレーキをかけていた。駐車灯は点灯していなかつた。)が、そのときには既に横川車の北側に南向き駐車車両があつた。

(五) 原告は、本件事故当日の午後九時ころから午後一〇時三〇分ころまでの間、本件事故現場の百数十メートル北方の本件道路沿いの宴会場で開催された勤務先の忘年会に参加して飲酒し、右忘年会が終わつた後、二次会の会場へ行くために原告車(排気量三六〇CC、車幅約一・三ないし一・四メートル、車長約三メートル)を運転して、本件道路を北から南に向かつて進行し、本件事故現場付近にさしかかつたが、その際原告車の前照灯は下向きに点灯していた。

原告は、北側交差点を通過し、道路左側(東側)に南向き駐車車両があつたため、これを避けて、車両右端(西端)と本件道路右端(西端)との間隔が約一・一ないし一・二メートルとなる位置を本件道路と並行に直進していたが、南向き駐車車両の南端付近(横川車の約八ないし九メートル北側)に達したときにはじめて進路前方に横川車が駐車しているのを発見し、衝突の危険を感じて急ブレーキの措置をとつたが間に合わず、原告車右前部を横川車右前部に衝突させ、横川車を約〇・九メートル南方に押し出して停止した。

なお原告は、本件事故現場付近が駐車禁止場所ではなく、駐車車両が多いことを知つていた。

(六) 本件事故により、原告車は、前部右端から左に〇・五五メートルの間及び右前照灯が破損し、前部ウインドガラスが割れた。横川車は、前部右端から左に〇・五五メートルの間及び右前照灯が破損した。

また、本件事故地点の北側の路面には、原告車の直線状の長さ約三・三メートルのスリツプ痕が本件道路と平行に付着していた。

2  原告車の速度、南向き駐車車両の駐車位置等について、右認定事実等に基づいて検討する。

(一) 原告車の速度について。

前記のとおり本件事故地点の北側の路面には、原告車の長さ約三・三メートルのスリツプ痕が付着していたものであるところ、一般に、乾燥アスフアルト道路において、衝突しないで停止した場合で、路面に約三・三メートルのスリツプ痕が付着していた場合の制動初速度(制動効果のあらわれる直前の速度)は時速約二五キロメートル程度と考えられるが、本件の場合は、右のとおり、原告車は横川車に衝突して前部を破損し、しかもサイドブレーキのかかつていた横川車を約〇・九メートル押し出して停止したものであり、衝突時(原告車がスリツプ痕の終点に達した時)にも相当程度の速度があつたものと考えられ、これらのことからすると、原告車の制動初速度は少なくとも、時速三〇キロメートルを超えていたものと認めるのが相当である。

なお、この点に関して、原告は本人尋問において、原告車の速度は、徐行程度の速度で、せいぜい時速二〇キロメートルであつた旨供述するが、右に検討したことに照らして信用することができない。

(二) 南向き駐車車両の駐車位置について。

南向き駐車車両の南端の位置については、前記のとおり横川車の北端から約八ないし九メートル北側であつたと認めるのが相当であるが、南向き駐車車両の車幅や西(右)端の位置については、これに関する直接証拠はない。しかしながら、南向き駐車車両は普通乗用自動車とワゴン車であつて、特別に車幅の広い車両であつたことを認めるに足りる証拠もないこと及び弁論の全趣旨からすると、普通乗用自動車である横川車と同程度の車幅であつたとみるのが相当であり、また、南向き駐車車両の左(東)側と本件道路東端との間隔についても、甲二の二(原告の兄作成の事故発生現場図面)及び弁論の全趣旨によれば、右間隔は相当近接していたと認められ、それが一メートルないしそれに近い間隔にまで大きく開いていたことを認めるに足りる証拠はなく(原告は本人尋問において、南向き駐車車両は助手席から人が乗降できる程度の間隔をあけて駐車していた旨供述するが、右甲二の二等に照らすと、右供述をもつて、右間隔が一メートルないしそれに近いものであつたことを基礎づけることはできない。)、これらのことに加え、本件道路の幅員(約六・一メートル)、横川車の駐車位置(東端が本件道路西端から約一・七メートル)を併せて考えると、横川車の東端の延長線と南向き駐車車両の西端線との間には約二メートル程度の間隔があつたものと認めるのが相当である。

3  以上の事実を前提にして、訴外会社の運行供用者責任の有無について判断する。

(一) 走行車両が駐車車両に衝突し、走行車両の運転者等が損害を被つたという態様の交通事故の場合、駐車車両の駐車場所が駐車禁止場所に指定されていない道路であつたというだけで、駐車させたものに過失がなかつたことを基礎づけられるものではなく、駐車禁止場所に指定されていない道路であつても、当該駐車態様が交通の円滑を阻害したり道路における危険を生じさせたりするもので、しかも交通事故の発生がそのような態様の駐車と相当因果関係のある場合であれば、駐車させた者に過失が認められることがあるというべきである。

そこで、以下、横川に本件事故の発生と相当因果関係のある過失があつたか否かについて検討する。

(二) 原告は、車両を駐車しようとする者には、交差点の側端などから五メートル以内の部分に駐車してはならない(道路交通法四四条)注意義務があるにもかかわらず、横川は交差点に後尾を接するようにして横川車を駐車させた過失があると主張するので、この点について検討するに、前記のとおり、車長約五メートルの横川車が南側交差点の北端から約八メートル北側を車両先端(北端)とする位置に駐車していたことからすると、車両後端は南側交差点の北端から約三メートル北側の位置であつたことになり、横川車の駐車は同条違反の駐車ということになる。

しかしながら、交差点の側端などから五メートル以内の部分に駐車してはならないとされるのは、そのような態様の駐車が、交差点で右左折しようとする車両の通行の円滑を阻害したり道路における危険を生じさせたりするものであつたり、交差点における直進車両であつても交差道路の見とおしを妨げたりすることで道路における危険を生じさせたりするものであることによるものであり、いずれにしても交差点を通過しようとする車両との関係で規制されているものというべきである。そうすると、本件のように交差点の通過とは無関係に発生した直線道路上の事故の場合、同条に違反して交差点の側端から五メートル以内の部分に駐車したことをもつて、本件事故発生の原因となるべき過失であつたとみることはできない(本件の場合、前記事実からすると、仮に南側交差点がなくとも本件事故発生自体には影響を及ぼさなかつたと考えられ、このことからすると、横川車が交差点近くに駐車していたから発生した事故ということはできず、右のとおり、前記違反は本件事故発生の原因となるべき過失であつたとみることはできない。なお、原告は本人尋問において、南側交差点でUターンする予定で本件事故現場付近を進行していた旨供述するが、前記認定の原告車の速度や直前まで横川車を発見できなかつたことに照らして、信用することができない。)。

(三) また、原告は、本件事故当時横川車の前方(北側)の本件道路東側には南向きの車両が二、三台駐車していたのであるから、横川車を本件道路西側に駐車させれば同道路を進行する自動車はハンドルを左右に切つてジグザグに進行せざるを得ないなど交通の妨害になるのが明らかであるのに、横川は、あえて本件道路上西側に沿つて、南向きの二、三台の駐車車両との間に他車をジグザグに進行させる程度の間隔しかあけずに、夜間駐車灯も点灯させずに駐車したものであり、横川にはこの点において過失があると主張するので検討する。

前記のとおり、本件道路は民家や商店の立ち並ぶ市街地の中を走り、歩車道の区別がなく、またセンターラインによつて通行区分帯の設定されていない幅員約六・一メートルの道路で、北側交差点の南端と南側交差点の北端との間隔は約二九メートルであり、北側交差点の北側及び南側交差点の南側の本件道路も、右と同じような間隔で東西道路との交差点(いずれも信号機が設置されていない。)があり、また本件道路が駐車禁止場所にも指定されておらず、両側に民家や商店が立ち並んでいたことから、本件事故現場付近の本件道路は普段から駐車車両が多かつたことなどからすると、速度規制がなされていなかつたとしても、本件道路は車両の高速通行が予定された道路ではないと認められる。

また、前記のとおり、横川車の東側に立つていた電柱の西端と横川車右(東)端との間には約四メートルの間隔があつたこと、南向き駐車車両の南端と横川車の北端との間には約八ないし九メートルの間隔があつたこと、横川車の東端の延長線と南向き駐車車両の西端線との間には約二メートルの間隔があつたこと、原告車の車幅は約一・三ないし一・四メートル、車長が約三メートルであつたことに加え、前記のとおり本件道路は車両の高速通行が予定された道路ではなかつたことも併せ考えれば、本件事故現場付近は、原告において、道路の状況に応じた速度で、前方を注視して走行してさえいれば、わずかのハンドル操作によつて容易に通過できるような道路状況、駐車状況であつたというべきである。

他方、原告は、飲酒のうえ前記のような状況の本件道路を時速三〇キロメートル以上の速度で進行し、横川車の約八ないし九メートル北側に達したときにはじめて進路前方に横川車が駐車しているのを発見したものであり、北側交差点通過後本件事故までの間に原告がハンドル操作をした形跡がないこと(原告は、本人尋問において、横川車を発見してハンドルを左に切つた旨供述するが、本件事故現場に付着したスリップ痕の形状に照らして信用することができない。)や当時夜間ではあつたが、本件道路の両側は民家や商店で、南側交差点付近には街灯もあり、本件事故付近はやや明るい状態であり、本件事故現場付近には原告車から横川車への見通しを妨げるものはなく、原告において、前方を注視さえしていれば、遅くとも、原告車が北側交差点を通過し南向き駐車車両の北端付近にさしかかつたときには、横川車を発見し得ていたであろうと考えられることも併せて考慮すると、本件事故は、本件道路西沿いに駐車した横川車の北端と本件道路沿いに駐車した南向き駐車車両の南端との間隔に関係なく、原告の前方不注視等の過失により発生したものというべきである。

以上のとおり、本件事故現場付近は、原告において、道路の状況に応じた速度で、前方を注視して走行してさえいれば、わずかのハンドル操作によつて容易に通過できるような道路状況、駐車状況であり、横川車の駐車態様は、原告車に対してジグザグ運転を余儀なくさせるようなものではなく、しかも、本件事故は、本件道路西沿いに駐車した横川車の北端と本件道路東沿いに駐車した南向き駐車車両の南端との間隔に関係なく、原告の前方不注視等の過失により発生したものであつて、横川が右態様で横川車を駐車させたことにつき、本件事故発生との間に相当因果関係のある過失があつたとは認め難い。

(四) そして、以上検討してきたところに加え、本件事故現場付近の本件道路が駐車禁止場所に指定されていなかつたことや横川車は本件道路左側端に接するような態様で駐車していたことも併せて考慮すれば、横川には、横川車を前記位置に駐車させたことにつき、本件事故発生と相当因果関係のある過失はないといわざるを得ず(また、前記事実によれば、横川車の運行供用者である訴外会社にも過失はなかつたというべきである。)、本件事故は、飲酒のうえ前方不注視のまま原告車を運転した原告の一方的過失により発生したものというべきである。

また、甲三及び弁論の全趣旨によれば、横川車には、本件事故発生の原因となるような構造上の欠陥及び機能上の障害もなかつたことが認められる。

(五) してみると、被告の自賠法三条ただし書による免責の主張は理由があるというべきである。

二  そうすると、原告の本訴請求は、その余の点を判断するまでもなく、理由がないことが明らかであるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 本多俊雄)

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